人気のサイクルスポーツ。サイクルロードレースなどをはじめとする競技スポーツから、ゆっくり景色や食べものを楽しむサイクリングまで様々あります。そんなサイクルスポーツの魅力を、プロフェッショナルコーチの青山剛氏の視点で毎月発信していきます。


Vol.20【最終回】「一番痩せる心拍ゾーンで走ろう!!」

ビアンキアンバサダーの青山剛です。

昨年から始まったこのコラムでは、サイクルスポーツの魅力や運動効果、そしてその正しい方法などをプロフェッショナルコーチの視点で紹介してきましたが、ビアンキのWeb改正などに伴い、今月で一度休刊になります。残念!

前回は回転数の重要性を書きましたが、最終回は自転車に乗る上でもう一つ大事な数値である「心拍数」についてです。これを使ったトレーニングを心拍トレーニングと言います。


■心拍数とは?

心拍数とは心臓が1分間に血液を拍出する回数のことで、移動系有酸素運動スポーツではとても大事な数値として扱われます。もちろんそれは自転車に乗る上でも「上手く使えば」パフォーマンスアップや脂肪燃焼に繋がります。最近のメーターには身体に心拍計測バンド(写真参照)をつければ計測されて表示されます。まずはじめはその心拍数の最低値と最高値を知ることから心拍トレーニングはスタートします。

■心拍数で体調も分かる?!

私は選手時代、毎朝起床時に起き上がらず横になったまま手首に指3本当てて心拍数(手首の場合正確には脈拍)を測っていました。特に有酸素運動能力が上がってくると、この安静時心拍数が少しずつ下がってきます。私の場合でも最小は44拍、マラソンの高橋尚子選手は40拍まで下がったそうです。これが最低心拍数になります。

また、疲労が溜まると安静時心拍数は高くなり、トライアスロンの強化選手を指導していた時は、その選手がいつもの安静時心拍数より10拍以上高ければその日の練習はオフ、もしくはリカバリー練習に変更をしていました。運動能力だけではなく心拍数はその日の体調を知る上でも大切な数値なのです。

■最高心拍数の出し方とは!?

安静時心拍数を最低心拍数とした場合、逆に最高心拍数を計測するのは一般の方は特に大変です。だって最高値ということはほぼ倒れるまで頑張らないとわからないからです(笑)従って下記のような計算式で最高心拍数を割り出します。

A:特に競技経験がない一般の方
 220-年齢

B:長年に渡り競技経験のある方
 210-(年齢÷2)

例えば50歳で競技経験がない一般の方の最高心拍数は170拍あたり、50歳で競技経験がある方は185拍あたりになります。
この両者とももし安静時の最低心拍数が60拍だとしたら、Aさんは60~170拍、Bさんは60~185拍の中で生きているということにもなりますし、この数値の幅を使ってトレーニングを効率的に行うことが求められます。

■一番脂肪が燃える心拍ゾーンとは?!

最低と最高心拍数が分かったところで、この数値の幅を使って少し計算をすると、様々な目的のトレーニングを「ドンピシャ」で行うことが出来ます。このコラムをご覧頂いている皆さんがおそらく一番知りたいのは「痩せる心拍ゾーン」ではないでしょうか?
いわゆる一番脂肪が燃焼する心拍ゾーンが知りたいと思いますので紹介します。

例えば上記Aさんの場合 最高170拍 最低60拍
・170-60=110
 110×0.55+60=120.5
 110×0.65+60=131.5
→約120拍~131拍の間で運動すると一番脂肪が燃える、ということになります。私が色々研究した結果、この55~65%が一番効率よく脂肪が燃焼できるゾーンだと指導しています。

■コーチアオヤマ式心拍計算式!

この計算式の特徴は安静時=その人の特徴、能力をちゃんと加味をしていて、なおかつ、最高値を競技経験者かどうかでも分けているので、とてもよく出来ています。
実はこれは私が日本体育大学時代に卒業論文での研究時に使った計算式なのです。当時も色々な心拍計算式がありましたが、これが最適でした。

実際にもこの計算式を使って、自分自身のトレーニングもしてきましたし、これを駆使してトライアスロン五輪選手も育てることが出来ました。もちろん脂肪燃焼ゾーンの他にも、耐乳酸ゾーン、リカバリーゾーンなど7段階に分かれていて、目的別に的確にトレーニングを行えます。まずは基本となるこのゾーンでぜひ走ってみて下さい。このゾーンでずっと自転車に乗れば、乗車中や休憩時は食べ放題かな(笑)?!

私が選手時代、ロングのトライアスロン大会(単独走)でバイクが100kを超えるような時は風向き、気温なども加味しながら回転数、心拍数に対してスピードがどれくらい出ているかをずっと感じながら走っていました。現在の選手はこれに出力(ワット)も加わってより効率的に走っています。

さて、全20回のコラムとなりましたが、いかがでしたか?
まだまだ書きたいネタがありますので、連載が再開されましたらまた綴っていきたく思います。それまでは安全第一で素晴らしいサイクリングライフをお送りください!


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*いつものプロフィール写真

■青山 剛 (あおやま たけし)

元トライアスロン日本代表。その後コーチに転身しトライアスロン女子五輪代表を輩出。
現在はプロフェッショナルコーチとして競技者から子ども、シニアまで幅広い層にトレーニング指導を行っている。全国で講演、セミナー、教室なども開催中。著書多数。国内唯一のビアンキブランドアンバサダーとして、正しいサイクルスポーツの普及発展にもあたっている。