人気のサイクルスポーツ。サイクルロードレースなどをはじめとする競技スポーツから、ゆっくり景色や食べものを楽しむサイクリングまで様々あります。そんなサイクルスポーツの魅力を、プロフェッショナルコーチの青山剛氏の視点で毎月発信していきます。
Vol.19「脚が太い理由、それは回転数だ!!」
ビアンキアンバサダーの青山剛です。
昨年から始まったこのコラムでは、サイクルスポーツの魅力や運動効果、そしてその正しい方法などをプロフェッショナルコーチの視点で紹介しています。前回は自転車(特にロードバイク)に乗る際に、スピードメーターのどの数値を気にして乗って欲しいかを書きました。
競技選手とファンライドでは若干気にする項目に違いがあることにも触れましたが、今回はそのあたりを少し深掘りしたいと思います。
■回転数とは?!
前回、競技者もファンライドも共通して気にして欲しい項目に回転数と心拍数があると書きました。特にロードバイク乗りはじめの方はスピード以上に回転数をまずはしっかりと把握して走って欲しく思います。その理由は後で書きますが、回転数とは1分間に足を何回回しているかのことで、クランクにセンサーをつけることで表示されます。
■私が回転数を気にし始めた理由!
私はトライアスロン競技をスタートした時と同時に、ロードバイクを本格的に乗り始めました(大学入学時)。当初はただただスピードばかりを気にして乗っていましたが、その冬プロトライアスリート山根英紀さんに弟子入りした初日、山根さんのメカニックを務める自転車屋さんに連れていかれ「回転数付き」のメーターを取り付けさせられました。そう、私が付けていたメーターには回転数表示がなかったのです。そして山根さんから私に出された指令は「基本100回転以上で乗れ!」でした。
それまでは重たいギアをグイグイ踏めば速くなると思っていましたが、まさに真逆。踏むではなく回す、ペダリングはまさに回転させることが大事だと教わったのです。その日以降、自転車に乗る時は常に回転数を気にして乗るようになりました。
■そして超速く、上手くなった!

もう少し私の体験談を。
常に100回転って、結構大変でした(笑)。もちろん向かい風、上り下り坂では回転数をキープ出来ないことはありましたが、周りの学生が遅い回転数で乗っている中、ひとり高回転をキープし続けました。それは練習だけではなくトライアスロン大会の時もです。
はじめの1年間位は重たいギアを踏んでいる選手たちには全く勝てませんでしたが「回転力」が上がってきた1年後以降、回転をキープしながらだんだんと重たいギアを回せるようになり、3種目で一番苦手だった自転車が、学生ではトップクラスになったのです。
私の感覚では速くなったというより、上手になっていった感じでした。
■脚が太いのは回転数が遅いから!?

何が言いたいかというと、自転車はギア×回転数、すなわち重たいギアをどれだけ回転させられるかでスピードが変わります。ランニングでいうと、ストライド×ピッチです。
自転車はまずはギアをどんどん重たくする前に、先に回転数、いわゆる回転力を上げていかないとその先で伸び悩んだり、故障したり、脚が太く重たくなったりしてしまうのです。
簡単な話「自転車が上手なサイクルロードレースの選手」で脚が太すぎる人、ほとんどいません。太いのは競輪選手かスプリンター(ゴール前で加速が強い)くらいです。
自転車に乗り始めて脚がどんどん太くなってしまっている方はおそらく回転数が遅く、重たいギアでグイグイ乗ってしまっている方ばかりです。それは最近のトライアスロン(特に女子)選手にも多いように見えます。出力値(パワーメーター)ばかりを気にしていて、回転力が低く、結果脚が太くなりランにも悪影響しているように見えます。
■お勧めの回転数は?!
では、このコラムをご覧頂いているファンライドメインやトライアスロンでのバイク上達を目指すような皆さんにお勧めの回転数は幾つかというとズバリ「90回転以上」です。
一般の方が100回転以上を目指すと逆にスカスカとしてしまい「空振り」気味になってしまうので、平地無風を基本とした場合は、90回転台をなるべくキープして乗るようにしましょう。もちろんそのフォームや練習方法はこれまでのこのコラムで紹介しましたから、ご参考ください。
次回は、もう一つの気にして欲しい項目の心拍数について深掘りしたいと思います。

■青山 剛 (あおやま たけし)
元トライアスロン日本代表。その後コーチに転身しトライアスロン女子五輪代表を輩出。現在はプロフェッショナルコーチとして競技者から子ども、シニアまで幅広い層にトレーニング指導を行っている。全国で講演、セミナー、教室なども開催中。著書多数。国内唯一のビアンキブランドアンバサダーとして、正しいサイクルスポーツの普及発展にもあたっている。